冬木れいプロフィール
ふゆき・れい/料理研究家。国際薬膳師。栃木県生まれ。
「良い食品づくりの会」に日本の食品開発の誠実を学び、地域食材のフィールドワークを経て、料理の道に入る。古典レシピをほりおこし、郷土料理、行事料理、茶事懐石料理を起点として、現代人の食卓事情にあわせた料理法を雑誌媒体メディア等にて提案している。主宰する料理研究サロン「大きな竈」では、野草、薬草をとりいれた薬膳料理、スパイス料理、江戸料理を幅広く紹介。EDO
WONDERLAND日光江戸村御膳部顧問として活動する傍ら、現在、江戸薬膳の本を執筆中。
撮影 木内和美
料理監修への想い
NHKドラマ「幕末グルメ
ブシメシ!」シリーズの料理監修を私が担当しました時に、その撮影で日光江戸村を訪れたのがご縁のはじまりです。日光江戸村には、本物の「江戸」がありました。江戸の街並みを再現しているということ以上に、江戸村を担う方々がみな、万人のふるさとのような、江戸人マインドでいらっしゃることが衝撃的でした。そして、江戸村の食に対する向きあい方は、いっさいの妥協なく本物志向で、昨今当たり前になっている化学調味料もつかわず、素材の旨味を活かす料理を基本としている。まさに、私自身がもとめる味づくりの姿がそこにありました。素朴でありながら豊潤、シンプルでありながら、複雑に絡み合っていく味の総体。
江戸文明のいちばんの上澄みが、いきいきと江戸村には保たれています。日本に生きる私たちの美味しさのはじまりは、江戸料理です。江戸の味覚の確かさを、ご来村されるお客様に、しっかりとお届けしたい。江戸村のお食事で、心も身体も整うような江戸料理をめざして、さらに精進を重ねていきたいと思っています。江戸の知恵、江戸文明をこの一皿に込めてまいります。
江戸料理をもっと知る
江戸料理は、日本の料理の屋台骨です。江戸の美味しさが、日本の味覚の土台となって、営々と今に引き継がれてきました。白めしに、しょう油・みりん・出汁で煮付けたおかずに、みそ汁。寿司、天ぷら、蕎麦に、鰻のかば焼きも、みんな江戸生まれなのですから、これは、まぎれもなく、日本の食のルーツといえるでしょう。
平和は食を躍進させます。天下泰平の江戸時代、新田開拓はすすみ、物流網も整備され、ものづくりも盛んとなって、人々の暮らしに余裕が生まれてまいります。あれがうまい、こうすると旨い、食べることに知恵を働かし、食べる快楽は勢いづきます。江戸で流行った味付けが、五街道を通じて、全国にいきわたっていく。口福が全国津々浦々まで行きわたる。安定と勢いのある時代だからこその姿です。料理の本も大いに出版されました。それが、地方への土産ものとなっていったのも、江戸の料理法が各地にひろまった理由のひとつかもしれません。
江戸の料理は、世界に先駆けて100万都市になった江戸の庶民のエネルギーの賜物です。旬をとらえ、素材を目利きし、包丁を冴えさせ、じっくり火入れする。おおらかで、気の利いた料理の数々。気の利いたというのは、知恵がある、面白さを感じさせるという意味です。気が入って、焦点がはっきりとした江戸の料理がパワーとなって、江戸の文明は勢いづいていったんだと思います。